DBSとは
脳深部刺激療法(DBS:Deep Brain Stimulation)のことで、脳深部に電極を正確に挿入し、至適条件で刺激することで、症状緩和を得る治療法のことです。目的とするターゲットは複数箇所ありますが、いずれも脳深部の小さいターゲットであるために、正確さが要求され、それを達成するために定位脳手術のテクニックを用います。
DBSの適応となる疾患
パーキンソン病
ジストニア
本態性振戦
など
手術の実際
近医関連施設(三愛病院)での実施になります。複数のターゲットがある中で症状に応じてターゲットを選択します。定位脳手術のためフレーム装着します。
電極挿入は局所麻酔下(意思疎通をとりながら)で行い、バッテリー留置は全身麻酔下で行います。入院は2週間〜4週間程度です。
より症状の改善を得るために
各ターゲットへ正確に電極を留置するため多くの工夫を用いております。
MRI上術前ターゲット
- MRIにて術前のターゲットを決定します。そのターゲットの算出方法にもいくつもの種類があります。脳の大きさ、萎縮の程度、電極の走行路など全て加味して計画を立てます。
術中電気生理学的検査
- 術前に定めた画像上ターゲットが至適ターゲットかは実際調べてみないとわかりません。術中に細胞活動記録を行いパーキンソン病の病態生理に適合した反応が得られるのか確認します。もちろん術前のターゲットと若干異なることもあり、その際は電気生理学的検査のデータを優先します。
術中刺激にて最終確認
- 電気生理学的検査にて至適反応が得られても、その部位を適切に刺激出来るかわかりませんし、刺激した結果予想された効果が出るかわかりません。必ず術中刺激を行いしびれ(感覚反応)や硬直(運動反応)が無く、症状の改善があることを確認し最終決定します。
合併症
手術操作によるもの |
出血
感染 |
---|---|
刺激によるもの |
構音障害
陽性精神症状(攻撃的、性的衝動など) |
減薬に伴うもの |
陰性精神症状(うつ、無気力、無快楽症) |
病状進行によるもの |
刺激の調整
専用の機械で調整します。症状改善には手術も重要ですが、その後のバッテリーの調整も重要です。症状が安定(至適部位、至適条件が確立されている)している場合は別ですが、進行するパーキンソン病にはその程度にあわせて調整する必要が出てきます。他院で手術を行った後の調整のみの受診でも可能です。
MRIの撮影は可能か
必要と判断した場合は撮影を行っております。相談下さい。
DBS後、他の手術は可能か
基本的に可能ですが、注意が必要です。
・心電図へのノイズが入るため手術時はIPG(バッテリー)をOFFにすること
・可能な限りバイポーラーの電気メスを使用すること
・モノポーラーの電気メスを使用する際には、対極板と電気メス(術野)の間に体内留置リードをまたがないように対極板を貼ること