背景
平成30年厚生労働省の簡易生命表の概況によりますと、日本人の平均寿命は男性で81.25年(世界3位)、女性で87.32年(世界2位)でいずれも過去最高を更新しました。また100歳以上の人口は69,785人(前年比+2,014人)となり、そのうちの約88%が女性です。
平均寿命の更新とともに、認知症数も増加すると想定され、平成29年厚生労働省の新オレンジプランによると2025年には認知症数は日本で700万人に達すると言われております。これは減りつつある日本の人口を鑑みると、全人口の7%に相当し、パーキンソン病患者数(約20万人)の約35倍、てんかん患者数(約100万人)の約7倍、糖尿病患者数(約315万人)の2倍以上に相当します。
治療の原状
増えつつある認知症患者に対して早急な治療が望まれますが、実情は厳しいものです。平成11年治療に対する薬の貢献度と医師の治療満足度のデータでは、認知症治療に関しては、薬の貢献度も、また医師の治療満足度も最も低いものにものになりました(下図をクリックで拡大)。
当医院での検査の進め方
- 問診にて現在の状況聴取
- 記憶や言語テスト
- 脳画像検査
- 血液検査
- (必要に応じて)髄液検査
- (必要に応じて)特殊検査
まずは、認知症の程度を客観的に評価(1)(2)した後に、画像(3)にて水頭症、慢性硬膜下血腫などの治療しうる病態の有無、海馬萎縮の程度、多発性脳梗塞の程度を評価します。該当する病気がある場合は、当該疾患の治療を行います。
アルツハイマー型認知症の種々の診断基準
認知症のタイプ分類
認知症を引き起こしうる器質的病変がなければ、アルツハーマー型、レビー小体型、前頭側頭型などの認知症のタイプ分けを可能な限り行います。各々の認知症のタイプには特徴がありますので問診である程度の分類は可能ですが、確定診断には診断の根拠となるデータが必要です。当院では脳髄液検査(5)のデータにて最終分類をしております。
認知症と出現する特徴的タンパク質
神経変性疾患による代表的な認知症であるアルツハイマー型、レビー小体型、前頭側頭型にはその発症機序に特徴的なタンパク質の蓄積が認められています。
アルツハイマー型:アミロイドβ、リン酸化タウ(p-tau) |
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レビー小体型:αシヌクレイン |
前頭側頭型:総タウ(t-tau)、TDP-43、FUS |
これら出現する特徴的タンパク質は、脳髄液検査でのみ測定可能のため、当院では脳髄液検査を積極的に行い、特にアミロイドβ、リン酸化タウの定量を行いアルツハイマー型認知症の診断を行っております。特殊検査のため結果が出るまで1ヶ月程度の時間を要します。
認知症に対する積極的治療(経頭蓋磁気治療)